火事を経験すると、性格は一変する。
トラッキング現象が常に気になり、外出時や就寝時は家中のコンセントを抜いておかなければ気が済まない。
放火の可能性もあったから、敷地内に何十個も監視カメラを取り付けたくなる。
「出火原因がわからない」状態は、僕をいっそう神経質にさせた。

冷蔵庫のコンセントを抜けないのが、いちばん精神的にくる。

どうしてもコンセントを抜きたいけど、どうしても抜けないと葛藤しながら家を出る。
帰宅途中の我が家が見えると、「ああ、よかった、今日もあった」と安心する。
なんなんですか、火事以降に植え付けられたこの迷惑な思考回路は。
ビョーキかな、と思うよねマジで。
自分の大切なものが燃えるのは、もうコリゴリだ。
そう思いながら、保管庫から取り寄せた最後の「Escape Artist」のロットを開封した。

美しい。
僕は、この光景が大好きだ。
なんて言えばいいんだろう、可能性に満ちてるから。
彼女たちは、これからご購入者様の手元に届き、マジックとして演じられ、たくさんの人々の驚く顔を見る。
その当たり前のように決められた未来。
誇りに思う。
でも、これでラスト。
彼女たちの行く先は、もう決まっている。
彼女たちがいるべき場所は、ここじゃない。
もっと別の場所に行くべきだ。

僕の事情で、2年間も暗闇に閉じ込めていた。
どうか、今こそ彼女たちに体験させていただけないだろうか。
目の前で自らが消え、拍手が鳴り止まないその状況を。
彼女は、あなたの元に行きたがっている。
決して、後悔はさせない。


マジックショップ「MAGIC SECRETS」の店長。
運営理念は、「“本当に使える”マジックしか販売しない。」
自らの商品をきっかけに初心者からプロマジシャンになった顧客が大勢いる。
小学生から高齢者まで、本気でマジックを学びたい方を徹底的にサポート中。
他では買えない価値のある商品を生み出すことに全力を注いでいる。




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