こんなブログを書いているわけですから、僕のもとには、マジックに関するご質問が日々寄せられます。
中でも、比較的多くご相談を受ける演技時の妨害への対処法についてここでひとつお話しておきたいと思います。

演技の途中で、「このタネはあそこでこうやってるんだよ」と周りの友人に「自分はタネが分かっちゃったぜ」みたいな「俺ってすげーだろ?アピール」をする方がいるのですが、どうしたら良いですか?
僕ならこの厄介な友人を、こう対処します。
「褒める」
まるでガキを相手にしているように、褒めるのとなだめるのを同時に、そして絶妙に行う感じが理想的です。
例えば、
「あれは、あそこでこうやったんだよ」と周りの人に言いふらしながらマジックを見る方。
そんな人がいたとします。
そこでマジシャンは、

なるほど、その方法良いね。今度使おうっと。
と、ニコッと微笑みます。
これには2つの意味があり、
1つは「その人自身が、悪い気がしない」という理由と、2つ目は「残念ながらそのやり方じゃないよ」という否定の含みです。
妨害してくるお客さんは、

自分は見破れるからすごいだろ?
みたいなアピールをしてきますが、その感情に対して、

うん、すごいよ、キミは。
と返してあげなければなりません。
しかし、その言葉をそっくりそのまま発してしまうと、マジシャンとしてはかなり感じが悪い奴になってしまうので、

へぇー、その方法いいね。考えもしなかった。今度使わせてもらおう。
みたいに、相手を褒めると、相手が悪い気分になりません。
勝手に「ちょっと認められた、俺はすごいやつ」なんて感じで勘違いしてくれると思います。
そして、「今度使おう」という言葉は、さっき演じたマジックは、そんなトリックではないという意味合いを暗に含んでいるので、そのマジックのネタバレが起きることもないというわけです。
「もう一回やって」とお願いされた時は、「オーケー、もう一回やるよ」などと言って、少し会話を繋げて、別のマジックを演じます。
例えば、カードマジックで「1/4」を演じた後、「もう一回やって」と、お願いされたとします。

そこで、

オーケー、じゃあもう一回だけやるよ。次はもっと難しい当て方をしてみよう。さっきは4枚しか使わなかったけど、今度はトランプ1組を使ってカード当てをしてみよう。
などと言って、「mind reading」を演じます。

このような演技の流れをとっても、お客さんは「いや、さっきと同じやつをしてくれ」
などとは言ってきません。
なので、このような繋ぎのマジック(先程演じたマジックと似たようなマジック)を用意しておくと、とても便利です。
もちろん演技の最後に「もう一回やってくれ」と言ってくるかもしれませんが、その時は、この一言で片付けてください。

このマジックはですね、3回目からは有料なんです(笑)。
こんな感じで笑顔で一蹴すれば、ギャグで捉えてくれると思います。
基本的には、マジシャンの都合の悪いことを求められた時は、ギャグで返すのが鉄則です。
そのマジシャンがこれまでどれだけの面倒臭い客を相手にし、どれだけの修羅の場をくぐってきたかは、
- そのマジシャンのギャグの面白さと
- 妨害の処理能力
- そしてその直後にその場の空気を支配することが出来るかどうか
で判断できます。
英語のイディオムのように、演技中のギャグを“決まり文句”として暗記しておくと、いざという時に重宝します。
あなたの演技やキャラに合わせて、一度考えてみると、パフォーマンスの面白さが増すことでしょう。
そして、演技中の客の妨害への対処が格段に上手くなると思います。

妨害に関しては、その客ごとに突っ込みどころが異なるので、具体的なアドバイスができないのが難しいところなんですが、少し考えただけでもいろいろ対処法は見つかります。
例えば、「疑われたら、自分も疑う。」ってスタンスを貫くとか。
初対面の人にカードマジックを演じた時に、

これってどうせトランプに仕掛けとかあるんでしょ?
と疑ってくる方がいたとします。
その時に、

え?仕掛けがあるトランプってどんなトランプですか?
と聞き返します。
自分は、そんな変なトランプなんて使っていませんよアピール。

裏から見て表の数字とマークが分かるとか。

へぇ~それ凄いですね。どこで買えるんですか?
ひたすら知らんぷり。

トランプ調べますか?
こんな感じで、客の妨害への対処は考え出したら切りがありません。
是非一度考えてみることをオススメします。
そして、“決まり文句”として使用できるよう暗記しておきましょう。
補足
プロではない一般の方がマジックをする時、お客さんは決まって、仲の良い友人たちです。
ヤツらは本当に容赦がない。

今の怪しい

ちょっと貸して

トランプ混ぜさせて
などなど、手加減なしに突っ込んできます。
残念ながら、このような対処法まで解説してくれる先生は、日本には存在していないのが事実です。
容赦のないヤツらを完璧に手玉に取り、最高に楽しませてあげるためには、タネとやり方を知るだけでは、全く歯が立ちません。
だから、YouTubeでどれだけ凄いマジックを学んでも意味がないんですよ。
僕のブログを読んでいる幸運なあなたは、必ず今回のような対処法を演技に取り入れ、マジックを演じる時はあなた主導になるように調整してくださいね。


マジックショップ「MAGIC SECRETS」の店長。
運営理念は、「“本当に使える”マジックしか販売しない。」
自らの商品をきっかけに初心者からプロマジシャンになった顧客が大勢いる。
小学生から高齢者まで、本気でマジックを学びたい方を徹底的にサポート中。
他では買えない価値のある商品を生み出すことに全力を注いでいる。
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