―― 平日、朝7時。
母親は、息子を起こしに階段をかけあがる。
いつもなら、

早く朝ご飯食べて学校に行きなさい!
と、たたき起こされる。
でも、今日は違った。

今日は学校行かなくていいから、ゆっくり寝てなさい。
なんで?
風邪なんて引いてないのに。
すごいマジックには、「そうなった、意味」が存在する。

世の中には、惜しいマジックがたくさんあります。
ここをもうちょっと工夫すれば、めちゃくちゃ良いマジックになるのに。
そんな惜しいマジックが、溢れています。
そして、その「惜しい理由」の大半が、「理由付けがされてないから」という理由です。
たとえば、近年、バイシクルのジョーカーがカラー仕様になりましたよね。


過去の無色のジョーカーが、カラーのジョーカーにチェンジするマジックをすれば面白いんじゃない?
という素晴らしい発想を持ったご購入者様からお便りがありました。
僕自身、これは非常に面白いネタだと感じましたが、すぐに一つの問題にぶち当たったことを覚えています。

なぜ、無色のジョーカーが、カラーに変わるのか?
いや、変わって良いんです。
だって、マジックですからね。
不思議なことが起こらなければならない。
きっと、そのまま演じても、

色が変わった!凄い!
と驚かれることでしょう。

しかし、ですよ。
人間の深層心理は海の底のように深いわけで。
ただ単にカラージョーカーに変わっても、

凄い! でも、なぜカラーに変わったの?
という疑問が生じてしまうのです。
だから、お客さんの心の奥底では、矛盾が起きています。

凄いことが起こったのに、どうして納得してないの、わたし? でも凄い。
みたいな。
現象における、矛盾の解決法とは?

それは、カラージョーカーに変わったことに関して理由付けがされてないことが、原因です。
どうして、カラージョーカーに変わったのか?
変わる必要はあったのか?
ようするに、
そうなった意味を考えよう。
ということ。
どんな理由でもいい。
でも、できれば、納得出来そうな、筋の通る理由が良いでしょう。
たとえば、カラーのボールペンでお絵かきするふりとか。

カラーのボールペンでお絵かきするふりをしたから、無色のジョーカーがカラーに変わった。
マジックですから、完全に納得させることは出来ませんし、どんなに理由付けをしたって筋は通りませんから、正解はありません。
しかし、観客の大半が納得できそうな、そして、なんとなく筋の通ってる理由付けが必要です。
普段は朝からうるさいお母さんが、「今日はゆっくり寝てていいよ」なんて笑顔で言ってきたら、なぜかと思い、理由が気になって、逆に目が覚めるでしょう?
「大雪で交通機関がストップしているから」って理由を聞くまで二度寝できません。
マジックも、それと同じ。
そうなった理由があるからこそ、疑う余地もなく100%驚いてもらえるのです。


マジックショップ「MAGIC SECRETS」の店長。
運営理念は、「“本当に使える”マジックしか販売しない。」
自らの商品をきっかけに初心者からプロマジシャンになった顧客が大勢いる。
小学生から高齢者まで、本気でマジックを学びたい方を徹底的にサポート中。
他では買えない価値のある商品を生み出すことに全力を注いでいる。
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