『Marlo’s Magazines』徹底レビュー:Ed Hassが読み解くEd Marloの深淵

『Marlo's Magazines』徹底レビュー:Ed Hassが読み解くEd Marloの深淵 商品レビュー

マジック界の巨人、Ed Marloが遺した膨大な資料集『Marlo’s Magazines』。全6巻、2,000ページを超えるこの「聖典」を、1年かけて隅々まで読み解こうという無謀とも言える挑戦を続けている男がいる。マジック歴70年を誇るベテラン、Ed Hassだ。

この記事では、Vanishing Inc.のブログに寄稿されたEd Hassによる連載「Two Ed’s Are Better Than One」の第2回目をリライトしてお届けする。今回は、Ed Marloによる「Oil and Water」の歴史的論争から、あまりにも多すぎる「Succession Aces」のバリエーション、そして現代でも通用する隠れた傑作技法まで、同氏の辛口かつ愛のあるレビューを紹介しよう。

中上級者のカードマンであれば、Ed Marloの名前を聞くだけで背筋が伸びる思いがするはずだ。しかし、あまりにも難解で膨大な彼の記述を独力で読み解くのは至難の業。Ed Hassというフィルターを通すことで、我々はこの迷宮をどう歩けばいいのか、そのヒントが見えてくるはずだ。

伝説の教典『Marlo’s Magazines』に挑む70年のキャリア

伝説の教典『Marlo's Magazines』に挑む70年のキャリア

まず、この途方もないプロジェクトに取り組んでいるEd Hassについて触れておく必要があるだろう。同氏はマジックの世界に70年以上身を置き、かつてはGenii Magazineからも高く評価されたマジックブログを8年間にわたって執筆していた人物だ。彼の教え子の中には、ニューヨークのIBM Ring 26の会長を務めた者も二人いるという。まさに「マジシャンが教えを請うマジシャン」の一人だ。

そんなEd Hassが、2026年を通じて挑んでいるのが『Marlo’s Magazines』の読破だ。週に5日、毎日8ページを読み進めれば、1年で2,000ページを完走できるという計算だ。同氏はVanishing Inc.のAndi Gladwinから許可を得て、自身のブログではなくVanishing Inc.のプラットフォームでこの旅の記録を公開することにした。名前が同じ「Ed」であることも何かの縁だろうが、Larry Hassとは血縁関係はないという。

Ed Hassによれば、このプロジェクトは単なる読書記録ではない。Ed Marloという、あまりにも多作で、時に独善的とも言える天才の思考回路を、現代の視点から再評価する試みだ。170ページほど読み進めるごとに、同氏はその中から特に興味深いトピックをピックアップして報告している。今回は、彼が1月から2月にかけて格闘した内容の一部を紹介しよう。

Oil and Waterを巡る論争と実用的なバリエーション

Oil and Waterを巡る論争と実用的なバリエーション

Ed Hassが今月読み進めた中で、最初に目を引いたのは「Oil and Water」のセクションだった。同氏とエディターのSal Mannuzzaは、以前からEd Marloのテクニックを研究しており、まるでCGIのような鮮やかな分離現象を追求していたという。そのため、本の中に書かれた「Dissertation on Oil and Water(水と油に関する論文)」には大きな期待を寄せていた。

しかし、読み進めたEd Hassを待っていたのは、期待していたような技法的な分析ではなく、Karl Fulvesに対する長々とした不満の羅列だった。Ed Marloは、Karl Fulvesが自身の「Oil and Water」の考案者としてのクレジットを貶めようとしていると主張し、激しく抗議していたのだ。歴史的な真実がどこにあるかはさておき、Ed Hassはこの記述を読み終えるのに丸一日を費やし、「時間の無駄だった」と率直に述べている。

一方で、実技面では収穫もあった。「Oil and Water, Plus Climaxes」という手順だ。これは複数フェイズで構成される手順で、最終的にすべてのカードが黒に変わるという強力なクライマックスを持っている。「石油を掘り当てる」という演出のテーマも秀逸で、Ed Hassもこれを高く評価している。ただし、同氏の好みからすると少々長すぎるため、今後さらに時間をかけて手順を短縮し、より洗練させる予定だという。

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「Secret Moves」セクションに見る技法とクレジットの謎

「Secret Moves」セクションに見る技法とクレジットの謎

続いてEd Hassが取り組んだのは「Secret Moves」の章だ。ここでも、マジック界の歴史的な「クレジット問題」が顔をのぞかせる。最初に紹介されている「Marlo’s Deal Switch」という技法だが、Ed Hassが確認したところ、これはDai Vernonの『The Dai Vernon Book of Magic』に記載されている「To Exchange a Card」と全く同一のものだった。

Karl Fulvesに対してはクレジットの権利を激しく主張していたEd Marloが、なぜDai Vernonの技法に酷似したものを自身の名前を冠して紹介しているのか。Ed Hassはこの矛盾に疑問を呈している。さらに、この技法の解説文についても「Palmed card」や「The card」といった言葉が入り乱れ、非常に分かりにくいと指摘している。もし同氏が事前にDai Vernonの本でこの動きを学んでいなければ、理解するのは不可能だっただろうとまで語っている。

しかし、失望ばかりではない。「Curry Turnover Change」に関するEd Marloのワークについては、非常に価値のあるものだと評価している。Paul Curryが考案したこのスイッチには、特有の不自然な準備動作(Get-ready)が必要だったが、Ed Marloはそれを克服する解決策を提示している。驚くべきことに、この解決策は発表から50年経った今でも、AIや検索エンジンでは見つけることができない「隠れた秘宝」なのだという。

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珠玉のトリック「Choice Elevator」と「Succession Aces」

珠玉のトリック「Choice Elevator」と「Succession Aces」

この章の締めくくりとして紹介されている「Choice Elevator」は、Ed Hassが「素晴らしいトリックだ」と絶賛する逸品だ。4枚のキングをテーブルに伏せ、観客が自由に選んだ1枚に対してデックを乗せると、そのカードがトップに上がってくる。この現象は繰り返すことができ、状況によってはカードがボトムに沈むこともある。観客が「自分で選んだ」という事実が、この現象を不可能に見せているのだ。

そして、この月のメインディッシュとも言えるのが「Succession Aces」だ。Ken Krenzelが考案したこのプロットは、一般的なエースアセンブリーとは一線を画している。1枚目のエースが消えて2つ目のパケットに現れ、次にその2枚が消えて3つ目に、最終的にすべてが4つ目のパケットに集まるという連続的な移動現象だ。しかし、ここでもEd Marlo特有の「バリエーション過多」という問題がEd Hassを悩ませることになる。

Ed Marloは、ダブルフェイスカードを使う方法、ダブルインデックスカードを使う方法、さらには借りたデックと1枚のギミックカードで行う方法など、次々とバリエーションを提示してくる。Ed Hassはそれらを一つずつ検証し、あるものは「不自然だ」と切り捨て、あるものは「厚みがあって扱いにくい」と退けた。最終的に同氏が辿り着いたのは、セットアップ済みのデックに2枚のカードを追加し、エース以外のカードでも演じられるように改良した独自のバージョンだった。

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現代のカードマンが『Marlo’s Magazines』から学ぶべきこと

現代のカードマンが『Marlo's Magazines』から学ぶべきこと

膨大なページ数と格闘したEd Hassは、この本の内容が「平均的な中級カードマン」であれば十分に習得可能な範囲にあると結論づけている。ただし、それには条件がある。Ed Marloが「当然知っているもの」として説明を省いている技法、例えば「Veeser Count」のテクニカル・バリエーションなどを、自力で調べ上げる根気が必要だ。

同氏はこの読解作業を「Travails(苦難)」と表現しているが、その言葉の裏には、埋もれた傑作を掘り起こす喜びも透けて見える。「Scoop-Up Palm」のような、特定の状況でしか使わないが知っておくと便利なパームなど、宝探しのような面白さがこの本には詰まっているのだ。Ed Hassの旅はまだ始まったばかりであり、2月の読書記録も間もなく公開される予定だ。

もし君が、棚に眠っている『Marlo’s Magazines』を手に取る勇気があるなら、Ed Hassの指摘を道しるべにしてみてはどうだろうか。難解な記述の先に、現代のインスタントなマジックにはない、重厚で計算され尽くしたカードマジックの真髄が待っているはずだ。一筋縄ではいかないEd Marloの世界だが、だからこそ挑む価値があると言えるだろう。

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